棚卸資産(仕損品等)の廃棄の税務上の取扱い
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棚卸資産の廃棄等
会社の事業活動から生じる棚卸資産(商品、原材料、仕掛品、製品など)の仕損品、品質劣化品、欠陥品、滞留品、期限切れ商品およびスクラップ品について、会計上は棚卸資産の価値に応じて、棚卸減耗損、棚卸廃棄損、商品低価損、在庫引当金などの会計処理を行うことにより費用化することになると考えられます。
一方、税務上は、歳入局施行規則No.Por.79/2541(以下、「廃棄等にかかる規則」)において棚卸資産の廃棄等に関する取扱いが規定されています。
正常廃棄物および異常廃棄物、スクラップの定義
廃棄等にかかる規則において、正常仕損品および異常仕損品、スクラップについては以下のように定義されています。
正常仕損品とは、生産工程において効率的な製造方法のもとで発生する仕損品であり、通常と認められる仕損率が設定されているもの。
異常仕損品とは、製造工程において効率的な製造方法のもとで発生する正常仕損品を超えて発生する仕損品をいう。
スクラップとは、特定の製造工程から発生する副産物であり、回収可能な価格が測定可能であるが、その量が少量であるもの。
生産工程から発生する正常仕損品の原価は、製品原価の一部として取り扱うと規定されているため損金算入は可能となります。一方、異常仕損品およびスクラップを廃棄する場合には後述する所定の手続および条件のものでのみ損金算入は可能とされています。
仕損品等の廃棄損計上の手続および条件
棚卸資産の(異常)仕損品、品質劣化品、欠陥品、滞留品、期限切れ商品およびスクラップ品を廃棄する場合には下記の所定の手続および条件があります。
(1)タイ法人がIEATに所在する場合
タイ法人がIEAT(タイ工業団地公社)に所在する場合、IEATが定める廃棄方法に準拠し、廃棄に際しては公認会計士を立会人とするか、または廃棄報告書を作成して公認会計士に報告する必要があります。公認会計士は廃棄報告書に対して文書による証明を行い財務諸表に添付する必要があります。
(2)タイ法人がBOI企業の場合
タイ法人がBOI企業であり、輸出用製品の製造のために使用する輸入原材料で、BOIに対して数量管理を行っている輸入原材料を廃棄する場合、BOIが定める規定、手続および条件に準拠し、廃棄に際しては公認会計士を立会人とするか、または廃棄報告書を作成して公認会計士に報告する必要があります。公認会計士は廃棄報告書に対して文書による証明を行い財務諸表に添付する必要があります。
なお、BOI企業であり、上述した輸入原材料に該当しない棚卸資産の廃棄については以下の(3)の規定に準拠する必要があります。
(3)タイ法人がIEAT企業、BOI企業ではない場合
(3.1)保存が困難な棚卸資産(仕損品等)の廃棄
保存が困難な棚卸資産(例:食品、医療品、化学製品等)の廃棄については下記の規定、手続および条件に準拠する場合にのみ廃棄にかかる損金算入が認められます。
①仕損品の状態について事業で定めた損傷条件に該当することを検査・確認し、権限者(取締役)の承認を得ること。
なお、返品商品の場合、受領日、数量、商品種類または商品コード、返品理由、注文書番号等を記載した証拠書類を準備し、顧客および返品受領者の署名を取得すること。また、返品商品を返品後すぐに廃棄しない場合、倉庫担当者は数量確認および署名を行い、会計部門に通知しなければならないと規定されています。
②廃棄の承認後、少なくとも倉庫部門、会計部門、販売部門または監査部門(ある場合)の担当者が立ち合い、実際に廃棄したことの証人として署名すること。
③公認会計士を立会人として廃棄日に立ち会いしてもらう(ただし、税務担当官への通知および立ち会いは不要)
(3.2)(3.1)以外の一定量をまとめて廃棄可能な棚卸資産(仕損品等)およびスクラップの廃棄
一定量をまとめて廃棄可能な棚卸資産およびスクラップの廃棄については、(3.1)の①~③に追加して下記の手続および条件に準拠する場合にのみ廃棄にかかる損金算入が認められます。
④廃棄予定日の30日前までに管轄の税務署へ通知しなければならないこと。税務署は必要に応じて税務担当官を廃棄日の立会人として廃棄状況を確認することになります。
棚卸資産(仕損品等)の廃棄にかかるVATの取扱い
棚卸資産の帳簿残高が実際残高よりも多額である場合、その差額については歳入法77/1条(8)の規定により「販売されたもの」としてみなされます。よって、棚卸資産(仕損品等)を廃棄する場合には当該規定により「販売されたもの」とみなされないよう上述したような「No.Por.79廃棄等にかかる規則」に準拠した廃棄手続を実施することが必要となる点に留意ください。
棚卸資産(仕損品等)の廃棄の具体的な手順例
(1)事前の準備(廃棄日の1.5ヵ月~2ヵ月前)
①廃棄する在庫リストの作成
会社の在庫リスト(購入日、請求書番号、在庫名、数量、金額等)から廃棄在庫分を抜粋する形式で廃棄する在庫リストを作成する。廃棄在庫の合計額も分かるようにしておく。
②廃棄する在庫の廃棄前写真
廃棄在庫リストのアイテム毎に廃棄前の写真を撮って、➀「廃棄在庫リスト」へ廃棄前写真として添付しておく。
また、廃棄在庫の選別をした様子も写真に数枚撮っておくと会社の廃棄プロセスの証憑となります。
③廃棄する旨の社内承認資料
社内承認資料(稟議書・取締役会議事録など)には、少なくとも承認日、承認者(サイン権取締役)の署名、廃棄(予定)日、廃棄する理由、廃棄在庫の合計数量・金額は記載し、➀➁「廃棄在庫のリスト」を添付資料としておく。
(2)税務署・監査人への通知(➀~➂までの手続が完了したら以下➃~⑥の手続を実施する)
④税務署への通知
廃棄日の30日前までに所轄税務署に在庫廃棄を行うという内容の通知書を提出する(通知書は必ず所轄税務署へ手渡しする。郵送の場合、税務署が受領する日が廃棄日の30日前までにならない可能性があるため)。税務担当官は廃棄日の立会人として廃棄状況を確認することがあります。
⑤監査人への連絡および立会見積書の入手
会計監査人に在庫廃棄を行うために立会・証明を行って欲しい旨の連絡をする。
⑥廃棄業者からの見積書
廃棄在庫についてはスクラップ業者に買取ってもらうのが一般的ですが、いつも利用する業者以外にも2社以上から買取見積書(いつもの業者よりも安い金額で買取る見積書=いつもの業者からの見積書が一番高い金額となる)を入手しておく。これはスクラップ業者への買取価格が市場価格であることの証憑とします。
(補足)IEAT/BOIへの通知
会社がIEATに所在している場合、または廃棄在庫がBOI事業のための輸入原材料である場合には別途、IEATまたはBOIの規定に準拠した手続および条件を満たす必要があります。
(3)廃棄日当日の手続
⑦廃棄立会の署名
廃棄に立会った証明として、関連部門(倉庫部門、会計部門、販売部門または監査部門(ある場合))の担当者の立会および実際に立ち会いを実施した署名を行います。
また、上述の(3.1)保存が困難な棚卸資産(仕損品等)以外の廃棄については、会計監査人にも立ち合いに参加してもらい立会人としての署名を入手する。さらに税務署担当官(もし来れば)も必要に応じて廃棄日の立会人として廃棄状況を確認することがある。署名は、事前に作成した「廃棄在庫リスト」の表紙に立会人の署名欄を作成しておくと良い。
⑧廃棄時の写真
廃棄時の様子を10枚~20枚程度、写真に撮っておく。
⑨廃棄にかかる会計仕訳の処理
上記全ての資料をセットにして会計部門に送付して会計仕訳を実施する。
以上、棚卸資産(仕損品等)の廃棄にかかる取り扱いとなります。廃棄以外の事項としては、棚卸資産が紛失または損壊した場合の取り扱いについてはコラム「紛失または損壊した資産」をご参照ください。
また、実地棚卸を行った際の実地棚卸差損の取扱いについては、「実地棚卸差損の税務上の取扱い」をご参照ください。
松元 勝彦
代表取締役 日本国公認会計士
大手監査法人で17年、うち10年はKPMG(タイ、マレーシア、シンガポール)にて海外駐在。 東南アジアにおける会計・税務・海外進出支援の実績を活かし、タイ国の日系企業から安心・信頼してご相談いただける会計事務所を目指す。