街を歩いていると、タイには黒い服や暗い服着た方が多くおり、国王の写真がたくさんあります。タイの人にとって、国王とはどのような存在なのでしょうか。 プミポン・アドゥンラヤデート(ラーマ9世)前国王が昨年の10月13日に崩御。御年89歳でした。18歳の時に即位され、約70年間も在位していました。これは現役の国家元首として世界最長でした。タイの国王の中で、チャクリー王朝からにはなりますが、プミポン国王の次に在位年数が長いのはラーマ5世の約42年です。その次がラーマ1世と3世の約27年です。プミポン国王の70年がとても長いことが分かります。
国王は当初、象徴的存在でしたが、1992年の政権と非政権の確執によるクーデターや2014年にあった軍事クーデターなど何度も国内の混乱を収拾しました。タイの各地を回り、自分自身で指揮を執り、タイの発展とタイの国民のために尽くしてこられました。荼毘に付される10月26日は国民が参列しやすくするために特別に休日となり、前国王を送る一連の儀式は10月25日から29日まで執り行われると今年4月19日、タイ政府が発表しました。
~葬儀の日程~ 25日 17時半 王宮内ドゥシットマハープラーサート宮殿にて出棺式 26日 7時 搬送式。王宮内ドゥシットマハープラーサート宮殿から火葬場へ。 17時半~22時 火葬場にて火葬式 27日 8時 火葬場にて骨上式。 28日 17時半 王宮内ドゥシットマハープラーサート宮殿にて遺骨法要式 29日 10時半 チャックリーマハープラーサート宮殿にて納骨式 17時半 パラーンニウェットウィハーン寺院及びラーチャポビット寺院にて遺灰安置式 前国王が崩御したことで、民間企業は1~3ヶ月、公務員は1年間喪に服す期間とされました。タイでは、外国人の方もダークグレーや暗い色のものを着用するように勧めています。そのため10月の葬儀が終わるまではタイでは派手な格好をしない方が良いと思います。
日本には天皇がいますが、タイのように政治に関与することはありません。日本国憲法で、日本および日本国民統合の象徴とされています。現天皇の明仁天皇は1989年に即位、御年84歳です。ちなみに日本で存在が確認できている天皇の中で、一番在位年数が長いのは昭和天皇の約62年です。その次が明治天皇の約45年、光格天皇の約37年です。 文部科学省によると、昭和天皇が崩御された時はタイの前国王の時より短く、民間企業は2日間、公務員は6日間が服喪期間でした。崩御されて2日間はタイと同様に、NHK教育テレビ以外のテレビ放送が全て昭和天皇に関するものとなり、ほとんどのお店が閉まりました。 プミポン前国王が崩御して、2016年12月1日にワチラーロンコーン皇太子(ラーマ10世)が新国王として即位されています。 朝日のタイ事務所のタイ人スタッフの方に聞くと、タイの人はみんなプミポン国王のことが大好きだと言っていました。前国王が崩御してから1年が経ちますが、今でもテレビや写真を見たり、国王の曲を聴いたりすると、前国王のことを思い出して悲しくなるそうです。一方で今はもう悲しくなく、普通に日常生活を送っているという方もおられましたが、話を聞いていく中で前国王のことを思い出し、泣いてしまわれた方もいたので、申し訳ない気持ちになりました。 前国王の葬儀の日はこの朝日のタイ事務所が休みになり、葬儀に行くと数名の方が言っておられました。しかし、葬儀に行く方はとても多いので、テレビを見るといった方もおられました。駅の中や街にある国王の写真の前を通りすぎる時に、立ち止まって手を合わせるタイ人の方を何度も見かけて、プミポン国王はとても愛され、私たちの想像を超えた、絶対的な存在であったのだと改めて思いました。
高知工科大学 M井