得意先で先に源泉徴収された税金のゆくえ
タイの源泉徴収される税金は、日本に比べて非常に多いです。
理由は、
①国は先にお金が欲しい
法人・個人ともに年1回の確定申告まで納税がないとなると、国のお財布事情は苦しくなります。
このため、安定的な歳入確保をするために、源泉徴収させます。
②個人からの納税は当てにできない
もともと個人の確定申告できちんと納税されるとは国は思っていません。
このため、期待できない個人から納税を期待するよりも、法人に税金の徴収義務を負わせたほうが、
個人の納税漏れを防ぐことができるため、国として好都合な仕組みにしています。
代表的なもので、給与源泉税・個人へのサービス業などがあります。
この部分は、日本も似ています。
日本でも給与から税金が引かれたり、個人専門家に仕事を依頼すると
請求額の全額を、その人に支払うのではなく、一部を国に納付し残りをその専門家に支払ってますよね。
それと同じです。
ただ、タイは法人に対しての源泉徴収税の種類も多いです。
これが日本と大きく異なる点です。
代表的なもので、サービス業(物を売らない業種)は、ほぼ源泉徴収しなければなりません。
弊社もサービス業に当たるため、お客様に請求をしてもその100%は入金されずに
97%だけ入金されます。3%はお客様が、弊社の代わりに税務署に先に納税しています。
この源泉徴収税が意味するのは、一言で言えば「税金の前払い」です。
このお金は、法人が確定申告の時期になったときに、その税額から控除できるため、
普通に利益が出ている会社は結果としては同じとなります。
【事例】
請求元=会計事務所(サービス業)A社
得意先=B社
A社がB社へ10,000の請求をします。(単位:バーツ)
サービス業の源泉徴収税は3%
◆請求されたB社がやること
請求書には本体取引10,000+VAT7%=10,700が載っています。
⑴源泉税を計算
本体取引10,000×3%=300です。
⑵源泉徴収表を作成
これは、A社に「きちんとA社に代わって、こちらで納税しておきました」的な意味合いものです。
⑶A社へ支払
A社には、10,700-源泉徴収税300(上記⑴)=10,400を支払います。
+上記⑵源泉徴収表をA社に渡します。
⑷A社に代わって納税
A社に支払った翌月の源泉税納税期日までに、A社の請求分から源泉した300を税務署に、A社に代わって納税します。
◆請求したA社がやること
⑴お金と源泉徴収表を回収
B社からは、お金10,400と300が記載された源泉徴収表原本を必ずもらわなければなりません。
⑵試算表に計上
源泉徴収された税金については、試算表の「Prepaid Corporate Tax」(名称は会社によって様々)として300を資産計上していきます。
⑶法人税確定申告で清算
年度末で計算された1年分の法人税から、この前払いされた300を引いて、差額を納税します。
この300について、利益が300ではないことに注意が必要です。
これはあくまで前払法人税です。つまり税金です。
300の税金に相当する利益は、法人税率から逆算して計算しないといけません。タイの法人税は20%です。
300÷20%=1,500の利益に対する税金が300となります。
ここでしっかり考える必要があります。
この事例の場合、
決算時に利益を1,500を出していないと、無駄に法人税を納税している状況といえるからです。
だったら還付すればいいじゃんって考えるかもしれませんが、還付申請には税務調査が伴います。
しかも1年~2年は係ります。
さらに、法人税の還付申請はVATの還付申請以上に、税務署は嫌がるため、色んな理由をつけて還付してくれません。
最悪な場合、売上高に対して一番コストの高い取引を否認し、追加納税と追徴課税を要求してきます。
このため、ほとんどの会社は還付申請せずに、多く支払った前払法人税の還付を諦めます。
よって、私は貸借対照表で必ずチェックするのは、この「Prepaid Corporate Tax(前払法人税)」の金額です。
いまどのくらい溜まっているかを常に確認します。
仮にこの前払法人税が、500,000バーツ溜まっていれば500,000÷20%=2,500,000バーツの利益を出さないと、
すでに支払っている法人税が無駄になると考えて、決算までにどのくらい利益を出せばいいかの予算計画を立てます。
皆様も、自社の貸借対象表の資産の部に「Prepaid Corporate Tax」に似た勘定科目を探してみてください。
そうすることで資金繰りも上手に回せるようになりますよ。