労働者福祉基金の導入(1年間の適用延期→2026年10月1日から適用)
- 給与計算
- 労務コンサル
労働者福祉基金の1年間の適用延期(2026年10月1日から適用)
タイ政府は、2025年8月26日にて労働者福祉基金の適用開始時期を現在の2025年10月1日から2026年10月1日へ1年間延期する閣議決定をしました。なお、会社および従業員の拠出率は、最初の5年間は賃金の0.25%、その後は0.5%で変更はありません。
(参考)下記は2025年5月12日の旧記事となります。
適用時期の記載についてはすべて「2025年10月1日→2026年10月1日」に読み換えください。
労働者福祉基金の概要
2024年11月に公布された労働者福祉基金(Employment Welfare Fund Committee)にかかる規則により、2025年10月1日より従業員が10名以上の会社は、会社および従業員がそれぞれ毎月、労働者福祉基金に一定額を拠出することが義務付けられました。
以下では労働者福祉基金にかかる規則についてポイントを説明します(なお、下記の情報は2025年7月30日時点の確認がベースとなります。)
基金への加入義務者
労働者福祉基金への加入義務は、従業員10名以上の会社の従業員となります。ただし、加入義務者の適用除外として以下の会社が規定されています。
・プロビデントファンド(退職積立基金)に加入している会社
・会社が社内で同じ目的の福祉制度を設定している会社
また、会社の取締役については加入義務はありません。
基金の拠出率
労働者福祉基金への会社の拠出率および従業員の拠出率は以下のとおりです。
| 2025年10月1日から2030年9月30日までの期間 | 2030年10月1日以降 | |
| 会社の拠出率 | 0.25% | 0.5% |
| 従業員の拠出率 | 0.25% | 0.5% |
従業員からの拠出金は、2025年10月1日以降の給与支給時に従業員の給与から控除することにより、会社が会社拠出金とともに基金へ支払うことになります。
なお、プロビデントファンド(退職積立基金)に加入している会社の従業員の加入義務は免除されているため、プロビデントファンドの会社拠出率を基金への拠出率である0.25%に設定できるか否かが論点になります。この点、会社拠出率は「プロビデントファンド法」により、2%以上(15%以下)と決まっているため基金への拠出率である0.25%に設定することは出来ないと考えます。
基金への支払期限
会社は、会社の拠出金と従業員の拠出金について、従業員名簿(Sor Kor Lor.3)を提出するとともに、給与支給月の翌月15日までに基金へ支払う必要があります。
なお、労働者名簿には、従業員情報、賃金、拠出額等の情報を記載する必要があり、労働者名簿の提出は労働局のウェブサイトを通じてオンラインによる提出を行う必要があります。
労働者福祉基金にかかるFAQ
労働者福祉基金への加入義務がある従業員は以下の通りとなります。
・日給制、週給制、月給制の従業員
・臨時雇用の従業員
・試用期間中の従業員
・プロビデントファンドに加入しない従業員
・外国人従業員
・定年後も就労し続ける従業員
従業員ではない者については加入義務がないため、雇用主(≒取締役)および雇用関係が無い者(例:請負契約者、インターン生など)については加入義務はありません。
回答:
入社から試用期間までの従業員についてはプロビデントファンドに加入していないため、労働者福祉基金への加入義務があります。その後、プロビデントファンドに加入した場合、加入した証拠とともに変更・訂正届(Sor Kor Lor.3.2)を提出することで労働者福祉基金から脱退することができます。ただし、脱退した従業員は拠出金の受給申請はできず、退職または死亡した時にのみ受給をうけることができます。
2社とも従業員が10名以上であれば、両方の会社で拠出しなければなりません。
労働者福祉基金への加入義務が生じた雇用者(会社)は以下の手順で労働者福祉基金への加入手続を行う。
①E-Serviceシステムから登録手続を実施する。
②登録時には従業員名簿(Sor Kor Lor.3またはSor Kor Lor3/1)をE-Serviceシステムから提出する。
③労働者保護福祉局から登録証明書(Sor Kor Lor.4)が発行される。
従業員が10名以上である会社がその後に10名未満に減った場合でも労働者福祉基金へ拠出金を引き続き申告・納付する必要があります。
労働者福祉基金への従業員の加入・脱退がある場合、または加入従業員の情報に変更・訂正がある場合には、従業員名簿の変更・訂正届(Sor Kor Lor.3/2)を変更があった月の翌月15日までにE-Serviceシステムから提出する。
加入従業員が退職(解雇含む)または死亡した場合に受給条件を満たすことになります。退職時には毎月提出する様式Sor Kor Lor.3に次の事項を記入します。
・雇用終了時
・退職(解雇)事由
また、退職には解雇、定年、自己都合退職、契約期間満了が含まれており、解雇事由の内容や懲戒解雇の場合でも(会社からの拠出金の)受給条件を満たすことになるため、プロビデントファンドとは異なる受給条件であると言えます。
計算基礎となる金額は、労働者保護法 第5条に規定されている「賃金」となります(社会保険料(SSF)の計算基礎と同様となります)。
労働者保護法 第5条の「賃金」の詳細については、コラム「労働者保護法の賃金について」を参照ください。
拠出金の計算基礎となる給与に上限額・下限額はありません。よって、従業員の給与が高額な場合には全てを計算基礎として拠出金の計算を行う必要があります。
従業員が出産休暇(無給期間)などの理由でその月に賃金の支払がなかった場合、労働者福祉基金の拠出金の計算基礎となる給与がないため納付する必要はありません。
会社が従業員へ給与を支給した月の翌月15日までに従業員名簿(Sor Kor Lor.3)をもって労働福祉保護事務所/地区事務所へ申告を行い、会社および従業員の拠出金を納付する必要があります。期限内に申告・納付しない場合、納付額の月5%のペナルティとともに支払わなければならない。
また、労働監督官は期限内に申告・納付しない会社に対して警告書を発行する権利を有しています。
会社が従業員へ支払うべき給与を支払わなかった場合でも会社は給与が支払われたものとみなして会社および従業員の拠出金を申告・納付する必要があります。また、会社が期限内に拠出金を納付しない場合、または納付した金額に不足がある場合、未納付額について月5%のペナルティを支払う義務を負います。
回答:
現時点では明確になっておりません。
回答:
会社の事業に関連する支出であるため損金として認められると考えられます。
松元 勝彦
代表取締役 日本国公認会計士
大手監査法人で17年、うち10年はKPMG(タイ、マレーシア、シンガポール)にて海外駐在。 東南アジアにおける会計・税務・海外進出支援の実績を活かし、タイ国の日系企業から安心・信頼してご相談いただける会計事務所を目指す。