労働者保護法の「賃金」について
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労働者保護法 第5条「賃金」の定義
労働者保護法 第5条(10)には「賃金」の定義が規定されています。
「賃金」とは、雇用契約に基づき、時間、日、週、月などの期間を単位として、通常の労働時間における労働の対価として支払われる、会社および従業員が合意した金銭を意味する、または従業員が通常の労働時間内に行った労働成果に基づく計算により支払われる。さらに本法令に基づき従業員が賃金を受領する権利を有する休日および休暇日(有給休暇、病気休暇など)に会社が従業員に支払う金銭を含む。
会社から従業員へ支給される「賃金」の定義は、社会保険料および2026年10月から導入される労働者福祉基金(EWF)の計算対象となる給与の範囲となるため重要となります。一方、個人所得税の計算対象(課税対象)となる給与の範囲は「賃金」および「賃金」以外の給与・手当等を含む範囲となるため留意が必要となります。
「賃金」か否かの判断基準
上述の労働者保護法 第5条(10)の「賃金」の定義から、「賃金」か否かは、①「通常の労働時間」における②「労働の対価」として③「会社と従業員が合意した金銭」であるかが判断基準の要素であることが分かります。
判断基準①「通常の労働時間」
「賃金」か否かの判断基準の1つとして「通常の労働時間」か否かというものがあります。よって、通常の労働時間以外に対して支払われる金銭である時間外手当(残業手当)については「賃金」の対象外になると考えることができます。
判断基準②「労働の対価」~支払の目的~
「賃金」か否かの判断基準の1つとして「労働の対価」か否かというものがあります。よって、給与の支払目的が「労働の対価」ではないような例えば以下の目的である支払については、名称の如何に関わらず「賃金」には該当しないと考えることができます。
・従業員への動機づけ目的のための支払
・従業員への報奨目的の支払
・従業員への福利厚生目的の支払
・従業員への経費精算の目的の支払
判断基準③「会社と従業員が合意した金銭」
「賃金」か否かの判断基準の1つとして「会社と従業員が合意した金銭」か否かというものがあります。よって、タイ現地法人と従業員との雇用契約にもとづいて支払われる給与が「賃金」であり、日本からの出向者/駐在員が日本本社との間で締結した雇用契約にもとづいて支払われる日本本社から支払われる給与は「賃金」の対象外となります。ただし、単に形式的に日本本社との間の雇用契約にもとづいて支払われるということではなく、実体として日本本社のために労働した対価であることが必要であるため、タイ国にてタイ現地法人で勤務する日本からの出向者/駐在員の場合、通常はタイ現地法人と従業員との雇用契約にもとづいて支払われる給与とみなされるかと思います。
また、「会社(タイ現地法人)と従業員が合意した金銭」には、タイ現地法人から従業員へ支給された(タイの銀行口座へ支払われた)給与のみならず、日本本社から従業員に支給された(日本の銀行口座へ支払われた)給与も含まれるということが過去の判例(最高裁判例991/2560など)から解釈されるため、タイ現地法人と従業員への雇用契約に基づいて支払われる給与であれば、その支払地がどこかは関係ないと考えることができます。
松元 勝彦
代表取締役 日本国公認会計士
大手監査法人で17年、うち10年はKPMG(タイ、マレーシア、シンガポール)にて海外駐在。 東南アジアにおける会計・税務・海外進出支援の実績を活かし、タイ国の日系企業から安心・信頼してご相談いただける会計事務所を目指す。