製造業にてタイ進出をする場合、法人の設立準備と同時にBOI申請を実施するのが一般的です。
BOI申請手続には通常、4ヶ月~6ヵ月程度を要するため、法人設立前にタイ法人代表者の個人名義でBOI申請を実施しておき、BOI奨励証書の受領前に下記を完了させるスケジュールで進めておく必要があります。
法人の設立後(または法人設立中)は、BOI申請と並行して下記事項の検討が必要となります。
タイでの工場用地の調査・選定について、一般的には下記条件を考慮する必要があります。
タイはガソリンの元となる原油や天然ガスを輸入に頼っているため、輸送にかかる燃料費は日本とさほど変わらず高く、かつ国際市場価格により変動します。よって、輸出販売がメインの場合は港や空港の近くに工場を建設し、タイ国内顧客メインの場合は大手顧客との距離が近くに工場を建設することを検討します。
労働集約的な製造業の場合は大人数の労働者が安く確保できる地方(タイでは県毎に最低賃金が定められており、バンコクから離れれば離れるほど最低賃金が安くなります)が有利であり、技術者やエンジニアの確保が必要な製造業の場合はバンコクに近い地域が有利となります。
外国資本49%以上の外資企業の土地購入・保有は土地法によって制限されているため、BOI企業または工業団地公社 (IEAT) が運営する工業団地の工場用地以外は土地は購入・保有ができません。
工業団地公社の工業団地は工業団地名の表記がIndustrial Estateとなっており、民間企業が運営する工業団地はIndustrial ParkもしくはIndustrial Zoneと区別できます。
タイの工業団地公社運営の工業団地には輸出加工区 (EPZ:export processing zone) といわれる免税区域が設定されています。また、上記以外にもフリーゾーンと呼ばれる免税区域が設定されています。
輸出加工区やフリーゾーンは輸入関税および付加価値税の観点からはタイ国外扱いとなるため、原材料の輸入関税や生産設備・機械の輸入関税および付加価値税が免除され、かつ税関の出張所が設けられているため、迅速な通関手続きが可能です。
タイに製造業として進出するには土地を購入して自社工場を建設する方法と、レンタル工場を借りて操業を行う方法があります。どちらが会社にとって最適なのかについては一般的に下記要素を検討することになります。
タイでは外国資本49%以上の外資企業の土地購入・保有は土地法によって制限されていますが、BOI企業の土地保有や工業団地内(IEAT内)の工場用地などについては外国資本100%の外資企業であっても土地を購入・保有することが可能となります。
工場用地の購入に際して用いられるタイでの土地の広さを表す単位として、ライ (1ライ = 1,600㎡(平方メートル)) があります。
工業団地公社運営の工業団地もしくは大規模な工業団地で一般的に分譲されている土地は3ライ以上であることが多く、民間の中小企業向けの小規模な工業団地では小さな面積での分譲もありますが一般的に2000㎡以下の小さな工場の場合はレンタル工場が多くなります。逆に工場面積が5,000㎡以上になると、レンタル工場物件が少なく、自社工場建設が多くなります。
工場用地を取得するかレンタルするかについて、その他メリットとして下記があります。
BOI企業は、工場建設/工場設備・機械の取得前までにBOI奨励の承認を得ておく必要があるため留意しなければならない。
また、工場設備・機械を海外から輸入してレンタルする場合にはレンタル料の支払時に源泉税の対象となるため注意が必要である。
工場建設および工場設備・機械の導入の完了後、工場操業前までに工場操業許可証(ファクトリー・ライセンス)の申請・取得をしなければならない。通常、操業許可証の申請・取得は、工場が所在している工業団地が手続きを代行してくるため事前に確認しておく必要がある。なお、操業許可証の発行にあたっては工業省の担当官が実際に工場視察を行い、工場設備・機械が導入され操業できる状態にあるか否かを確認される。
また、日本人のVisa延長申請時には工場操業許可証を取得していなければならないため留意が必要である。
BOI恩典を受けている企業は、工場操業後、最初の製品販売にかかる請求書(TAX INVOICE)を発行した際にBOIへ届出を行う必要がある。これはBOI恩典にて法人税の免税を受けている場合、その免税期間は最初の製品販売にかかる請求書の発行日が免税開始日となるためである。