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雇用契約における有期雇用と無期雇用の違いと留意点

  • 労務コンサル

有期雇用契約と留意点

通常、会社と従業員との間の雇用契約は「無期雇用契約」を前提としています。それは雇用契約書において雇用期間の定め(=雇用契約の終了日)が記載されていないためです。よって、労働者保護法には定義されていませんが、雇用期間が定められている(=雇用契約の終了日が記載されている)雇用契約は「有期雇用契約」と呼ばれています。
会社が従業員との間で「有期雇用契約」を行う場合の主な留意点は以下の通りです。
・就業規則
・有給休暇や疾病休暇などの法定休暇および社会保険
・解雇補償金
・試用期間
・無期雇用契約とみなされる場合と留意点
それぞれの留意点について詳細を見ていこうと思います。

就業規則

会社の就業規則は無期雇用の従業員または有期雇用の従業員に関わらず全ての従業員に適用されることになります。これは「有期雇用契約」および「無期雇用契約」は雇用形態の違いであり、会社と従業員との間に雇用契約(=雇用関係)があることに変わりはないためです。よって、「有期雇用契約」の従業員であったとしても、就業規則のみならず労働者保護法も同様に適用されるというのが大前提となります。
よって、例えば有期雇用契約の従業員に就業規則とは異なる労働日や労働時間を適用するような場合には有期雇用契約書にてその内容を記載して会社と従業員が同意しておく必要があります。

法定休暇および社会保険

前述のとおり有期雇用契約であっても就業規則および労働者保護法の規定は適用されるため、有給休暇および疾病休暇などの法定休暇については付与する必要があります。また、社会保険への加入も当然に必要となります。

解雇補償金

有期雇用の従業員について定められた雇用期間満了によって雇用契約が終了する場合でも、労働者保護法に基づく解雇補償金の支払いは原則、必要となりますので注意してください。ただし、雇用期間満了により当然に雇用契約が終了するため事前通知は必要ありません。
上述の解雇補償金の支払いが「原則、必要」というのは、例外的に以下の要件①~③をすべて満たす場合にのみ解雇補償金の支払いが不要とされています(労働者保護法118条3項、4項)。
①業務内容が以下のいずれかを満たしていること
・会社の通常の事業または取引ではない特別なプロジェクトの業務であり、業務の開始と終了が明確に確定している業務
 ・一時的・臨時的な業務であり、業務の終了または完了時期が確定している業務
・季節的な業務
②雇用期間が2年以下であること
③会社と従業員が雇用開始時において書面(雇用契約書)において契約(合意)していること
ここで重要なポイントは、①業務内容が「通常の事業または取引ではない特別なプロジェクト」の業務であるという点です。
例えば、建設会社の建設プロジェクトの事務業務のために1年契約で従業員を雇用した場合、プロジェクト自体は一時的であったとしても、建設プロジェクトの事務業務そのものは建設会社の「通常の事業」の一環とみなされるため、上記①の要件を満たしていないことから原則通り、雇用契約満了時において解雇補償金の支払いが必要となると考えます。
別の例では、定年退職した従業員について、退職前に行っていた営業業務を後任に引継ぐのために1年契約で再雇用した場合、営業業務の引継ぎも会社の「通常の事業」の一環であるとみなされるため、上記①の要件を満たしていないことから原則通り、再雇用契約満了時において解雇補償金の支払いが必要になると考えます。
上記例のように有期雇用契約において解雇補償金の支払いが不要とされる例外は非常に限定的であるため、安易に有期雇用契約であれば解雇補償金を支払う必要はないと理解してはいけないという点に注意してください。

試用期間

通常、無期雇用契約において従業員の適正・能力を判断するために試用期間を設定することが一般的ですが、有期雇用契約において試用期間の設定をすることはできません。これは、労働者保護法17条2項において試用期間を設定する場合、その雇用契約は契約期間の定めがない契約(つまり無期雇用契約)とみなされるという規定があるためです。

無期雇用契約とみなされる有期雇用契約

有期雇用契約と無期雇用契約の違いは、「雇用期間の定め(=雇用契約の終了日)」が記載されているか否かとなります。しかし、雇用期間の定めが記載されている有期雇用契約書において、その実態が無期雇用契約であるとみなされるケースがあることに注意が必要です。このような形式的には有期雇用契約であったとしても、実態が無期雇用契約とみなされるケースとして以下があります。

反復的な契約更新
有期雇用契約書において反復的に契約更新されるようなケースでは、そもそも「雇用期間」が定められていない実態があるとして無期雇用契約とみなされる可能性が高くなることに注意が必要です。また、自動的・黙示的に契約が更新されるような内容になっているケースも無期雇用とみなされる可能性が高くなるため注意が必要であるとともに、契約更新時には会社および従業員が契約更新の理由および新たな雇用期間(=雇用契約の終了日)を明確にしておくことが重要だと考えます。ただし、契約更新が反復的に行われた事実がある場合には、その実態のみで無期雇用契約とみなされる可能性が高いと考えられます。

契約期間が未確実・未確定な条項
有期雇用契約において雇用期間(=雇用契約の終了日)を不確実または未確定とするような内容になっているケースでも無期雇用契約とみなされる可能性が高くなることに注意が必要です。例えば、雇用期間の終了前に会社の都合で契約を終了できる権利を定めているような場合には、「雇用期間」が定められているとは言えないとして無期雇用契約とみなされる可能性が高いと考えられます。一方、雇用期間の終了前に従業員の都合で契約を終了する場合には、自己都合の退職となるため無期雇用契約とみなされることは無いと考えられます。

試用期間の設定
前述のとおり有期雇用契約において試用期間の定めが記載されているケースでは、無期雇用契約とみなされます。

無期雇用契約とみなされた場合の留意点

有期雇用契約が無期雇用契約とみなされた場合の留意点は、雇用期間の終了日に当然に雇用契約が終了するということにはならず、会社都合の解雇とみなされることにあります。よって、会社都合の解雇を行う際に必要な「事前通知」および「解雇の正当な理由」を求められることに注意が必要です。
最後に無期雇用契約と有期雇用契約について主要な相違点を以下に纏めてみました。

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  無期雇用契約 有期雇用契約
雇用期間 雇用期間の定めなし 雇用期間の定めあり
試用期間 試用期間の定めは可能 試用期間の定めは不可
契約終了 自己都合の退職、定年、会社都合の解雇、懲戒解雇など 雇用契約の終了日に自動的に契約終了※
契約終了の事前通知 会社都合の解雇には必要 不要※
契約終了の正当な理由 会社都合の解雇には必要 不要※
解雇補償金 定年、会社都合の解雇には必要 原則、必要
(不要となる例外は限定的)
労働者保護法や就業規則の適用 適用される 適用される

※有期雇用契約が無期雇用契約とみなされないことが前提となる。

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