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共通経費にかかる仕入VATの按分計算

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法改正の概要

歳入局は、2025年2月にDepartmental Instruction No. Paw. 164/2568を発行し、VAT課税売上とVAT対象外売上/VAT非課税売上に紐付けることができない共通経費にかかる仕入VAT(仮払VAT)の仕入税額控除の算定方法(各売上高にもとづく按分計算方法)を明確にしました。
当該規定により、全体の仕入VATからVAT対象外売上高(タイ国外-タイ国外の取引)にかかる仕入VAT(仮払VAT)を控除して仕入税額控除を計算してVAT月次申告・納税を実施する必要があります。

VAT売上の種類

共通経費にかかる仕入VATの按分計算の前にVAT取引(VAT売上)の種類について整理しておきます。
すべてのVAT売上は、VAT課税売上(VAT Taxable Sales)、VAT非課税売上(VAT exempted Sales)およびVAT対象外売上(Out of Scope VAT Sales)の3種類に区分することができ、それぞれのVAT売上のVAT税率および主な取引例は以下のとおりです。

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VAT取引の種類 税率 主な取引例
VAT課税売上 7%または0% 7%税率は、物品の国内販売、サービスの国内提供(多くの売上がこちらに該当します)
0%税率は、物品の輸出、サービスの輸出
VAT非課税売上 なし 食料品の販売など
VAT対象外売上 なし タイ国外-タイ国外の物品販売など

なお、VAT非課税取引は食料品の販売など特定事業のみを対象としているため、これ以降はVAT課税売上とVAT対象外売上に絞って記述していきます。

共通経費にかかる仕入VAT

共通経費にかかる仕入VATとは、「VAT売上高の種類」で記載したVAT課税売上、VAT非課税売上およびVAT対象外売上のいずれにも直接、紐付けることができない経費にかかる仕入VATのことで、事務所賃料、車両リース料、事務用品費、会計費用などのいわゆる一般管理費に計上される費用の仕入VATが該当します。
共通経費にかかる仕入VATのうち、VAT対象外売上にかかる仕入VAT(仮払VAT)をVAT売上の合計金額に対するVAT対象外売上の比率によって按分計算して、当該仕入VATについては仕入税額控除として利用することができないため、月次VAT申告書において仕入VATの合計金額から控除する必要があります。

共通経費にかかる仕入VATの具体例

(例示)
タイ法人T社の2025年7月の売上高と共通経費にかかる仕入VATの金額は以下のとおりです。
この場合、共通経費にかかる仕入VATのうち仕入税額控除として利用することができない仕入VATの金額を計算します。

➀国内の商品販売の売上高および海外への商品輸出の売上高:16,000,000バーツ
➁タイ国外-タイ国外の間の商品販売:4,000,000バーツ
③売上高の合計額(➀+➁):20,000,000バーツ

④VAT課税売上に直接関連する仕入VATの金額:3,000,000バーツ
⑤共通経費にかかる仕入VATの金額:1,000,000バーツ
⑥仕入VATの合計額(④+⑤):4,000,000バーツ

共通経費の仕入VATのうち、仕入税額控除できない仕入VATの金額は以下によって求められます。
⑤1,000,000×➁4,000,000÷(➀16,000,000+➁4,000,000)=200,000バーツ(⑦)
よって、仕入税額控除が可能な仕入VATの合計額は④3,000,000+(⑤1,000,000-⑦200,000)=3,800,000バーツとなります。
なお、従前の仕入税額控除が可能な仕入VATの合計額は⑥4,000,000バーツでしたので、VAT月次申告の仕入VAT金額は当該規定により異なることになるため留意が必要です。

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