法人所得税|市場価格による取引価格の規定
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市場価格による取引価格
タイ歳入法(65条の2(4))において、すべての取引価格(物品販売、サービス提供、貸付金利を含むすべての取引価格)は市場価格によってなされなければならないと規定されています。また、同条では取引価格と市場価格との間に乖離がある場合、税務担当官は取引価格を市場価格に修正して(推定)課税する権限を有するとも規定されています。
また、市場価格については所謂、移転価格の概念が適用されており、市場価格とは「独立した第三者間で同種の取引が行われた場合に取引が成立するであろう価格」であり、歳入局勅令113/2545号において市場価格の実務指針として以下の4つの方法が例示されています。
・独立価格比準法(CUP法)
・再販売価格基準法(RP法)
・原価基準法(CP法)
・その他の方法
独立価格比準法(CUP法)
独立した第三者との間の取引と同様な取引状況の下で、同種の取引(物品販売、サービス提供、貸付金利)を行った場合における価格に相当する金額を市場価格(独立企業間価格)とする方法
再販売価格基準法(RP法)
独立した第三者に対する再販売価格から通常の利益の額を差し引いて計算した価格を市場価格(独立企業間価格)とする方法
原価基準法(CP法)
物品販売の原価またはサービス提供の原価に適切な利益を加算して計算した価格を市場価格(独立企業間価格)とする方法
市場価格とみなされない取引事例
このようにタイ歳入法における「すべての取引価格(物品販売、サービス提供、貸付金利を含むすべての取引価格)は市場価格によってなされなければならない」という規定は、関連当事者間(親子会社間やグループ会社間)の取引について適用される移転価格取引のみならず、独立した第三者(親子会社/グループ会社以外のすべての取引相手)との間のすべての取引において適用される幅広い規定となっていることに特徴があります。
会社が通常の事業において親子会社/グループ会社間やそれ以外のすべての取引相手との取引について、市場価格とみなされず税務調査の対象となりやすい個別の取引事例について以下のような取引があります。
・在庫や固定資産の廃棄
・従業員への会社資産(在庫および固定資産)の売却
・非上場株式の譲渡(特に不動産や有価証券などの資産を保有する会社の株式の譲渡)
・親子会社/グループ会社への資産の低廉譲渡(低廉価格で資産を譲渡すること)
また、個別の取引事例ではないですが、市場価格を根拠として税務調査の対象となりやすい事例について以下のような事象があります。
・製品/商品グループ別の粗利益率が低い/赤字の製品/商品グループにかかる取引
・プロジェクト別の粗利率が低い/赤字のプロジェクトにかかる取引
・(法人税恩典のある)BOI事業に比較して利益率が低い/赤字のNon-BOI事業にかかる取引
・会社全体で利益率が低い/赤字の会社
非上場株式の譲渡
非上場株式を譲渡する場合の譲渡価格についても市場価格によってなされなければならないという歳入法(65条の2(4))の規定が適用されるため、歳入局勅令113/2545号における市場価格の4つの方法に準拠した市場価格の算定が必要となります。
しかし、上場株式のように証券市場によって取引価格が公表されるものと異なり、非上場株式は証券市場のような取引市場がないため、どのようにして市場価格を算定するのかが論点となりますが、タイ歳入法などの法令において具体的な算定方法は規定されていません。
この点、歳入局FAQ(0706/843 非上場株式の売却における法人所得税)において、非上場株式の譲渡価格については、会社の財務諸表における1株あたり純資産をベースに算定する考え方が示されています。ただし、この場合の会社の純資産については簿価純資産ではなく、適切な時価評価を行った時価純資産をベースに算定することが妥当だと考えられます。よって、製造業のように土地、建物といった不動産が含まれている会社の株式譲渡を行う場合には、当該不動産の時価評価を考慮したうえでの1株あたり時価純資産をベースに株式の譲渡価格を算定する必要があることを検討しなければならないと考えます(当然にその他の方法によって市場価格を算定することにより妥当性がある場合には当該方法によって市場価格を算定する選択肢もあると考えます)。
いずれにせよ、非上場株式の譲渡については適切なタイ税務専門家と相談されることをお勧めいたします。