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タイ会計|小口現金管理の実務と留意点

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小口現金の補充方式

小口現金の補充方法には主に2つの方式があります。
随時補充方式
小口現金が不足しそうな時にその都度、必要な分を補充する方式。補充のタイミングおよび金額が担当者の裁量になるため、運用にあたっては上長のモニタリングが必要です。

定額前渡方式
あらかじめ小口現金の適正金額を定めて、一定期間が経過したあと、期間内に使用した分を補充する方式。補充のタイミングおよび金額があらかじめ設定されているため不正防止の観点から有効です。

小口現金の使用目的および適正金額

小口現金の管理を適切に行うためにも小口現金で支払うものを限定しておく必要があります。多額の仕入請求書や給与などは銀行振込により支払うことは当然ですが、経費支払の中でもサプライヤーから請求書が発行されるようなものは銀行振込により支払う必要があります。
このように小口現金で支払う使用目的を限定することにより、小口現金の適正金額を少額にしておくことは不正防止の観点から非常に重要です。

なお、タイではほとんど全ての支払は銀行振込が可能となっており、小口現金でなければ支払えないものとして通常、以下のようなものがあります。
・従業員の経費精算(交通費、ガソリン代など※1)
・政府定数料、印紙
・小さな商店での少額な支払※2
※1)公共交通機関(BTSやMRTの切符、都内タクシー/バイク代、バス代などは領収書が入手できないことが一般的ですが、業務上の支出であることを示す経費精算書および責任者の承認があれば法人税上の損金算入は実務上可能です。
※2)少額支払で発行される小さな店舗での簡易タックスインボイスでは、仕入税額控除ができません。仕入税額控除を受ける場合には正規のタックスインボイスの発行が必要となりますので留意ください。

小口現金出納帳(日々の小口現金の管理)

日々の小口現金の管理のために小口現金出納帳を作成しておく必要があります。また、小口現金出納帳への記入の都度、および記入取引ごとに会計処理および記帳を行い、月末にまとめて会計処理および記帳をしないように運用する必要があります。

小口現金出納帳には最低限、日付、伝票番号、摘要(※)、入金額、支払額、残高の項目を作成しておく必要があります。
※摘要欄には、入金の相手先および内容、出金の相手先および支払内容、経費精算の従業員名と精算内容などを簡潔に記載しておくと上長のチェックが容易になります。

小口現金の現物確認

小口現金の現物確認について、小口現金の取引頻度や保有残高によって現物確認の頻度を決定する必要があります。実務的には、月末残高は月次決算の観点からも必ず実施しておき、それ以外では週1回以上程度は実施しておいた方が良いと考えます。

現物確認には金種表と呼ばれる現金の種類(1,000バーツ札、10バーツ硬貨など)ごとに枚数および金額の欄がある証憑によって実施し、現金出納帳の残高との照合を行い、不明残がないことを確認する必要があります。また、最低でも月1回は上長による現物確認および承認を受けておくことが大切です。

なお、回収した小切手は現金現物と同様に管理する必要があります。回収の都度、遅滞なく銀行へ預入処理を行う必要があり、やむを得ず会社にて保管する場合には現金現物と同じように管理する必要があります。

小口現金の保管

小口現金は手提げ金庫にて保管し、業務時間外は大金庫にて手提げ金庫自体を保管して管理する必要があります。

小口現金口座の運用

小口現金については現金現物にて運用・管理することが一般的です。ただし、事業上の理由から小口現金による支払頻度が多い、または小口現金による支払の緊急性が高いような業種では小口現金口座を使用しているケースが見受けられます。小口現金口座にかかる留意点について簡単に取り纏めます。

「個人名義」口座か「法人名義」口座か

小口現金口座を開設する場合、原則は「法人名義」口座にて運用・管理する必要があると考えます。これは、「個人名義」口座を利用する場合には個人の預金と区別がつかなくなることや、不正の温床になる可能性が高いためです。ただし、「法人名義」口座にて運用・管理する場合には、会社近くに銀行がないことの不便性や現金引出などの事務手続の煩雑さが伴うのも事実です。

「個人名義」口座の運用・管理の留意点

上述のように「法人名義」口座にて運用・管理するのが望ましく、一般的であると考えますが、やむを得ず「個人名義」口座にて運用・管理する場合には少なくとも以下のような管理を徹底する必要があります。

従業員の通常口座とは別の小口現金のための専用口座を「個人名義」口座として開設させる。
日々の取引については「個人名義」口座にかかる小口現金出納帳を別途、作成させて従業員へ署名させる。現金現物の確認タイミングにて「個人名義」口座の銀行通帳コピーを提出させ、小口現金出納帳との照合を実施させる。

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