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タイ現地法人の事業撤退・事業縮小にかかる会社清算と会社休眠の比較

  • 法務コンサル

会社清算か会社休眠の判断

タイ現地法人の事業を撤退する、または縮小する場合、「会社清算」という方法と「会社休眠」という方法があります。
それぞれタイ現地法人の事業活動を停止(売上を計上しない)するという点では同じです。しかし、「会社清算」が会社解散および清算にかかる商務省への登記を経て会社が消滅するのに対して、「会社休眠」は税務署への休眠申請のみであり休眠にかかる商務省への登記は不要であるため会社は存続し続けるという点で異なります。
よって、事業を撤退する、または縮小する場合に「会社清算」か「会社休眠」かの判断基準の1つとしては将来、停止した事業活動を再開する予定・可能性があるか否かがあります。

会社清算と会社休眠の比較

「会社清算」と「会社休眠」の具体的な比較となります。
なお、「会社清算」にかかる具体的な解説は別途コラムを参照ください。

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比較項目 会社清算 会社休眠
目的

会社の完全撤退。
会社の登記は抹消され、会社は消滅。

会社の一時的な事業停止、将来の事業再開を想定。
会社の登記は継続され、会社は存続。
法的ステータス 法人格は消滅する。
法人解散日以降は清算人が会社の資産管理を行う。
法人格は維持される(事業停止)。
従来通り、取締役が会社の資産管理を行う。
会計記帳・決算業務 事業解散日(最終年度分)までの会計記帳、決算業務が必要。 従来通り、会計記帳、決算業務が必要。
監査手続 事業解散日(最終年度分)までの監査手続が必要。 従来通り毎年、監査手続が必要。
税務申告(月次) ・月次VAT申告は、事業解散日以降も売上ゼロでも税務署からVAT登記抹消レター入手まで継続して必要。
・月次源泉税申告は、源泉税の取引が発生した都度、必要。
・清算登記した会社消滅後はVAT、源泉税の月次申告は不要。
・月次VAT申告は、売上ゼロでも月次VAT申告は継続して必要
・月次源泉税申告は、源泉税の取引が発生した都度、必要。
税務申告(年次) 事業解散日(最終年度分)まで法人税申告(中間申告および年度申告)は必要。 従来通り、売上ゼロでも法人税申告(中間申告および年度申告)は必要。
税務調査 通常、清算登記前に税務署による税務調査が実施される。 通常、休眠会社に対して税務調査が実施されることは少ない(但し長期休業で税務署から問い合わせ・調査が入る可能性はあり)。
ライセンス・許認可 事業解散までに各種ライセンス・許認可はキャンセルが必要。 休眠中の各種ライセンス・許認可は維持(ただし、維持手続・コストは別途検討が必要)。
法的手続概要 会社清算にかかる法的手続は以下の通りです。
①全ての資産売却、債権回収、債務支払、ライセンス・許認可キャンセル
②従業員解雇・解雇補償金支払・社会保険関連手続
③新聞広告2回(株主および債権者向け)、株主総会の特別決議(事業解散日および清算人任命)
④事業解散日および清算人登記、VATキャンセル申請
⑤最終の決算書作成
⑥税務署の税務調査対応
⑦新聞広告、最終株主総会による清算完了決議
⑧清算完了登記
会社休眠にかかる法的手続は以下の通りです。
➀税務署への休業届※の提出
➁従業員解雇・解雇補償金支払・社会保険関連手続
VISA・WP タイ人従業員の解雇や事業解散により日本人のVISA・WPの更新・維持は不可。VISA・WPキャンセル手続が必要。 タイ人従業員の解雇や事業停止により日本人のVISA・WPの更新・維持不可。VISA・WPキャンセル手続が必要。
維持コスト 法人清算の主な維持コストは以下の通り。
・解散・清算登記時に法務登記・税務申請などの費用
・記帳代行・税務申告・会計監査などの月次・年次のコンプライアンス費用が一定期間は発生
・税務調査対応などの費用
・清算登記が認められるまでの登記住所の維持(レンタル)費用
・会計書類の保管費用(税法5年間、会社法10年間の保管義務あり)
・税務署への休業届提出などの費用
・記帳代行・税務申告・会計監査などの月次・年次のコンプライアンス費用が従来通り発生
・登記住所の維持(レンタル)費用
・会計書類の保管費用(税法5年間、会社法10年間の保管義務あり)
所要期間 事業撤退・縮小の判断から事業解散までの準備期間に約半年~1年超、かつ事業解散から清算登記完了まで約1年半~3年くらいが必要(ケースにより異なる)。 税務署への休業届の準備および提出のみ半年~1年程度が必要。
事業再開の可否 事業再開は不可。事業再開には新規で法人設立が必要。 事業再開は可能。

上記の比較表は、一般のタイ現地法人を前提としており、BOI法人/IEAT法人や駐在員事務所等を想定していない点にご留意ください。

会社清算と会社休眠

「会社清算」と「会社休眠」の簡単なメリット・デメリットは以下の通りです。

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  会社清算 会社休眠
メリット

タイ事業からの完全撤退が可能。
清算により将来的な義務、リスク無くなる。
会社の維持費用が不要。

タイ事業の再開が可能。
会社のブランド、ライセンス・許認可などの維持が可能(維持費用などは別途、要検討)
事業再開後に過去の法人税の繰越欠損金(5年以内)が使用可能。
税務調査の対象年度(通常3年~5年)が過ぎてから会社清算を実施する目的でまず会社休眠→会社清算も可能。
デメリット 会社清算の完了まで法的手続、税務調査、事務費用が発生。
タイ事業の再開やタイ再進出には新規で法人設立が必要。
会社の維持費用(会計記帳、会計監査、税務申告、登記住所、書類保管)が毎年継続して発生。
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